| 現在、一般に広く使用されている陶芸窯には、ガス窯、灯油窯、電気窯の三種類があります。ここではそれぞれの特徴とポイントを説明します。 |
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■私たちの考える良い窯とは
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「自分の作品が良く焼けることだけに集中して窯焚きができる窯」であると考えます。
窯を焚くときのすべての操作は良い作品に通じるためにあるべきです。
いかに良いやきものができるかどうかが問題なのであって、窯の技術やスペックはこれを達成するためにあるのです。 |
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■焼成のバランス(温度差)について
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ガス窯や灯油窯は倒炎式という炎の流れで作られるのが主流です。
これは窯の左右にバーナーを配して、熱を炉床に設けられた穴から煙道、煙突へと流れてゆく仕組みです。
ガス窯の場合、一般に焼成むらが少ないのが特徴です。弊社製品では上下の温度差が数度で焼き上がるものもあります。これは例えば0.4m3ですと左右に3本ずつ計6本バーナーを配して製作しますが、ガスバーナーは火足が短く、小さいので満遍なく熱が炉内にまわってゆくことが可能です。火足が短いということは炎の頂点が低いことなので、熱が炉内の上部に溜まり過ぎないようにできる効果があるのです。次に、バーナーが小さいということは、炉内に並べる本数が増えることなのでおのずと焼けむらも少なくなるのです。
こういったことから、炉内温度差は数℃から20℃位に抑えられます。
また、ベンチュリー効果を利用したガスバーナーは、機械的部品が非常に少なく自然現象を利用しているのでやきものにもやさしいバーナーといえます。
灯油窯は比較的温度差の多いのが特徴です。これは灯油という燃料の性格上仕方ないことですが、送風機で空気の流れを作ってあげることで燃焼しますので、火足が長くなります。また、灯油バーナーのカロリーは大きいので大きなバーナーを少数炉内に配置するので、窯の四隅、つまり角まで熱が回りにくいという現象が出ます。
こういったことから、灯油窯の炉内温度差は100℃程度あっても不思議ではありません。
電気窯は電気的に温度をコントロールするので、焼成装置などで容易に温度管理が出来ます。最近の電気窯は焼成装置が発達したので、炉内温度差の非常に少ない製品もあります。 |
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■焼成雰囲気について
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焼成雰囲気とは酸化雰囲気と還元雰囲気に大別できます。酸化雰囲気は焼成中、窯の中に充分な酸素が供給され、燃焼による二酸化炭素(CO2)と酸素(O2)がある状態です。
これに対して還元雰囲気は酸素の供給が少ない状態の燃焼(酸欠状態)で、炉内の酸素はゼロとなり一酸化炭素(CO)が発生します。この一酸化炭素は釉や素地の中の酸化金属を還元して色を変化させます。
ガス窯は、酸化雰囲気、還元雰囲気どちらも無理なく焼成できることから作品のバリエーションが多くなる窯といえます。かの鈴木蔵先生は雑誌記事の中で「ガスとエアーの量をコントロールしたら、酸化も還元焼成も自由だし、窯変も意のままになると考えました。」と述べています。つまり、焼成中に酸化と還元雰囲気を交互に組み合わせたりすることも容易に可能なのです。
灯油窯はどちらかというと還元焼成が得意な窯といえます。灯油バーナーのカロリーが高く燃えきらない炎が残ることから酸化で焼くことは得意ではありません。もし酸化で焼こうとすると焼成中の炎は還元の場合よりも長くなるので炉内の上下温度差がつきやすくなります。このような理由から、営業で使用されることは少ないといえます。
電気窯はこれとは逆に酸化焼成が得意な窯と言えます。電気窯の焼成雰囲気はほぼ空気と同じで、酸素が21%ほど存在します。これはガスや灯油での酸化焼成の酸素量6%に比較して圧倒的に多い数字といえます。電気窯の還元焼成は少量のプロパンガスなどを窯の中に入れて煙の多い炎を作ってやれば可能です。こうすると作品の出来と引き換えに発熱体が傷むということも認識しなければなりません。 |
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■焼成コスト
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陶芸窯を選ぶ際に重要なのは、焼成コストなどで選ぶのではなく、自分が作りたいものがその窯で実現できるかということです。窯を最初に買う場合の理由の中に、「焼成コストが安いので」ということで選ばれるのを聞きますが、窯の性能なども充分に考えて選んで欲しいものと思います。
最近まで焼成コストが最も安いのは灯油窯といわれてきましたが、近年の原油高によりそうともいえなくなってきました。灯油は安いときは35円/リットル程度でしたが最近は70円/リットルを越える状態です(平成18年3月現在)。古くはオイルショック時には数倍に跳ね上がったという歴史的事実もあり、その不安定さゆえに敬遠する人もいます。これに対して電気、ガスは比較的価格が安定していますので、数年のうちに2倍にもなるということはありませんでした。
プロパンガスの購入方法には、気体で買う場合と液体で買う場合の二通りの方法があります。気体(ガス化したもの)で購入するのは一般家庭用です。液体(ボンベ単位)で購入するのは主に工業用となります。工業用として使用する場合は使用量が多くなるので単価は安くなります。陶芸窯はこれにあたります。購入の際はガス屋さんと価格の相談をしてください。 |
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■設置スペース
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陶芸窯を使う場合、窯というものの性格上専用の場所(窯場)があることが理想です。
笠間や益子といった産地では、電気窯、ガス窯、灯油窯に限らず、もちろん穴窯や登り窯も含めて必ず独立した設置スペースとして窯場があります。
電気窯、ガス窯、灯油窯を置く窯場は必ずといっていいほど建物の北側にあり、冬は寒く、夏は暑い典型的な場所です。 |
■注■
私たち業者が築炉作業でうかがうと真冬・真夏は季節との戦いです。真冬はモルタルが凍らないように白熱球をいくつもつけたり、真夏はまさに暑さとの戦いです。特に窯の増設などで築炉するときは隣の窯に火が入っているときなどは、窯場の気温はゆうに40℃を超えることは言うまでもありません。 |
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■操作性・安全性
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操作性や安全性は陶芸窯を選ぶ場合に重要な部分といえます。これは窯ばかりではなく窯場や使用する人まで徹底することが必要です。
ガス窯の安全性はガスという見えない気体燃料ということから、爆発するという不安がある方も多いのですが、ガスの性格を充分理解して窯を操作すれば非常に安全でクリーンな燃料といえます。笠間・益子地区には数百のガス窯がありますが、火事に至った例はありません。
というのも、もしもガス窯内にガスが溜まりそれに何かの火で着火したときは、窯の天井部分のレンガが抜けるように施工されています。これによって周囲には広がらないので大事故になることが少ないのです。ですから、ガス窯の安全性は非常に高いといえます。
ガス窯配管の主な継ぎ手部分は溶接で施工され、フランジを使いボルト締めすることが多いので、窯の伸縮による配管部分の損傷が起こらないように考えられています。
ガス窯の操作性は非常に高いといえます。ガスの配管は上流側からボンベ・調整器などの制御機器・バーナーというように1系統です。つまり、ひとつの調整器でガスの圧力を変化させれば点火しているバーナーすべてに及ぶので非常に楽に操作できます。また、窯に供給されるエアーのコントロールは、基本的に窯背面のドラフトやダンパーで行いますので炎のバランスを意識することなく焼成が可能です。
灯油窯の安全性は灯油という液体燃料が一般家庭で広く使用されているので、ユーザーが直接取り扱えるという点では客観的に安全な燃料です。では、どういうときが危険なのでしょうか。灯油はほとんど臭いがしません。ですから焼成中にバーナーなどから漏れ出ていても気づくのに遅れる場合があります。これに火がついた場合がもっとも危険です。
ですから灯油窯焼成中は出来るだけ窯から離れないことが重要です。陶芸窯の火災例はほとんどがこの灯油漏れに気づくのが遅れたことです。
灯油窯の操作は比較的手間がかかります。これゆえに小さな窯が多いのも理由のひとつかもしれません。灯油の配管は上流側から灯油タンク〜バーナーとなり非常にシンプルですが、灯油タンクから分かれてそれぞれの独立したバーナーへとつながっているので、バーナー独自に油量、エアーの調整をしなければならないのがガス窯と決定的に違うところです。倒炎式ですと左右のバランスをとることにコツがいるといえます。
灯油窯を使用する場合には上下のバランスに加えて、左右のバランスも考えて窯焚をしなければなりません。
電気窯の安全性は非常に高いものがあります。焼成装置の発達により安全確実に焼成してくれます。では、どういうときが危険なのでしょうか。電気窯焼成中は素手で触らないことは言うまでもありません。電気窯は小さなものを除いて200Vを使用している場合が多いので、感電の危険があります。また、落雷などにより焼成装置の電子部品が壊れると予定通りに終了しないことも考えられます。
電気窯の操作性は最高のものがあるといってよいでしょう。それはもちろん高性能な焼成装置を導入した場合です。焼成装置に予定した温度と時間を入力するとその通りに焼成されますので、特に徐冷が必要な結晶釉の作品を創る場合には威力を発揮します。 |
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■窯の使用可能年数はどれくらい?
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私たち窯メーカーがいわゆる窯の寿命を述べるのは非常に心苦しいものがあります。
しかしながら、あえてこれを述べることによって、陶芸家が陶芸窯を選ぶときの参考にしていただければと思い述べることとします。
陶芸窯の使用可能年数が長い順でいうと、(1)ガス窯、(2)灯油窯、(3)電気窯となります。
ガス窯は一般的に30年位といわれています。これは使用環境や焼成の頻度などでも変わってきますが、ガス窯は機械的構造の部分がほとんどないので長期にわたって使用できます。
一方、灯油窯はガス窯と違いバーナー部分の機械的構造により故障が起きやすいので、ガス窯よりも最初のメンテナンス時期は早く到来します。灯油窯の使用可能年数はバーナーのそれと一致することもあります。つまり、バーナーが使用不能になったときが最初の目安です。早いものですと4,5年。長くても10年ほどでそれぞれのバーナーが順番に故障します。
最後に電気窯は、発熱体。つまりヒーターです。ヒーターは200回から300回の本焼焼成が目安です。200回焼成したころから断線し始めます。断線修理を繰り返すとどんどんとヒーター線の長さが短くなってゆきますから、限界が見えてくるのです。ヒーターは2回を限度に張替えが可能な場合があります。 |
■注■
(1)ガス窯
ここで言うガス窯とはベンチュリーバーナーとプロパンガス、ブタンガスを使用したものであって、都市ガスを燃料としたものではありません。
(2)機械的構造
灯油バーナーの機械的構造には、送風機があげられます。送風機は燃焼中長時間にわたって回り続けますので軸受け部分が磨耗します。とくに送風中にほこりを吸い続けると磨耗しやすいのも事実です。送風中に異常な音が出始めたら早めにメーカーに相談すると良いでしょう。
(3)10年
弊社が経験的に得た年数であって、使用回数、使用環境などで変化します。 (4)順番に
工業製品としてのばらつきはほとんど無いと言ってよいので、故障がひとつ発生するとすぐに二つめ三つめと順番に発生します。
(5)2回を限度
これは出荷時にあったものとさらに2回という意味です。出荷時にあったものを取り外すと、固定してあったUピンの抜けあと(穴)がレンガに残ります。つぎに新しいヒーター線を張るときこの穴を避けて打たなければなりません。また、レンガの表面が焼成を繰り返すことで硬化するので、2回目の時にはだいぶヒーター線の固定が困難ということになります。 |